マラソン初挑戦の皆様へ

重松森雄さんが教える、初マラソン攻略法!!

重松 森雄(しげまつ もりお)

福岡県大野城市総合体育館館長
1940年福岡市出身。福岡大学卒。1965年ボストンマラソン優勝、同年ウインザーマラソンでエチオピアのアベベが東京オリンピックで作った世界最高記録を更新する2時間12分00秒で優勝。 岩田屋女子駅伝部、サニックス女子駅伝部監督を務めた。現在「福岡ランナーズクラブネットワーク」会長。福岡マラソン実現に向けて尽力した一人。福岡マラソン実行委員会委員も務める。

健康な身体づくりがマラソンのスタートです。さぁ、元気にスタートしましょう!
身体づくりのポイント
  • ❶ 睡眠を十分にとる
  • ❷ 食事はバランスよく摂取する
  • ❸ 暴飲暴食はしない
  • ❹ 夏風邪・寝冷えに注意する
  • ❺ 水分をしっかり補給して熱中症に気をつける
  • シューズ&ウェア選び
  • トレーニング
  • 食事の取り方

トレーニング

初心者ランナーの皆さんにまず考えられることは、大会までトレーニングの時間が足りない、42.195kmという未知の距離に対して、果たして完走できるだろうかという不安、そして自信がないというのが本音でしょう。でもこれからのトレーニングによって完走は絶対にできます。

初心者ランナー向け練習メニュー

それぞれのレベルに合わせて参考にしてください。

3か月前 2か月前 1か月前 1週間
Walk
30分
Walk & Slow Jog
30~40分
Run
30~40分
Slow Jog
20~30分
10分Run+10分Walk
×3セット
(朝)Run 30分
(夕)Run 30分
Run
60分
完全休養
Walk
30分
Walk
30~60分
Walk
60分
Slow Jog
20~30分
10分Run+10分Walk
×3セット
(朝)Run 30分
(夕)Run 30分
Run
60分
100m×3本の流し*

Slow Jog 20~30分
Step運動30分
or
階段上り500~800段
Step運動
&
軽い運動 30分
Step運動
&
坂道の上り
(100m×10本)
完全休養
15分Run+5分Walk
×3セット
Run
60分
Run 60分
(月2回は90分)
Slow Jog 10~20分
& Walk
完全休養 完全休養
or
低山ハイキング
完全休養 大会本番!!

●Runは相手と話しながら楽に走れるスピード、または心拍数138-(年齢÷2)のスピード
●Walkは5km/時間のスピード
●Step運動は15~25cmの台でやるのがよい
●レース前(7~8日)は、カーボローディングと組み合わせた90分以上のSlow Jogを入れることもよい
*流しは全速力の6割程度の力で、筋肉に少し刺激を与えるようなイメージで行う

3か月前の練習

初心者の皆さんに最初にやっていただくことは、絶対に無理をしないということです。きつい時は思い切って休んでください。

ポイントは、福岡大学の田中宏暁教授が提唱されているニコニコペースで走ることです。これは、おしゃべりをしながら息を切らすことなく走れるスピードです。ひとつの目安として心拍数があります。138-(年齢÷2)の計算式から出てくる前後の心拍数のスピードで走れば、疲労を残すことなく走れるということです。

【例:40歳の場合・・・138-(40÷2)=138-20=心拍数118】

そして、この時期に合わせてやっていただきたいのが、体重(体脂肪)を落とすことです。体重(体脂肪)を落とせばひざへの負担が軽減できますし、グリコーゲン(エネルギーを貯蔵するための物質)の消耗も少なくてすむので、楽に走れることは間違いありません。

2か月前の練習

初心者ランナーの皆さま、レースまで2か月となりましたね。
トレーニングは予定通りできていますか。体脂肪は少しでも減らすことができましたか。60分のランニング(約10km)ができるようになりましたか。

このレベルまで達成された方は、この月一度でいいですから、ハーフマラソンの距離(21.0975km)にチャレンジしてみましょう。友人とのランニングであればお喋りをしながら、一人でのランニングであれば得意な曲を歌いながら、自分が走れるスピードで走ってみましょう。
その中で、まだこの距離は無理と思われる方は、60分のランニングの中で楽な感覚で走れるペースをしっかり確認してください。

今皆さまは、初マラソンへの距離に対する不安と練習からくる焦りで、落ち着かない日々を送っておられると思いますが、心配無用。きつければ歩けばいい、つらい時は次回にチャレンジすればいい、こういった気持ちで乗り切ってください。

故障時の対処法

ハードトレーニングをすれば故障はつきものです。故障した場合は、次のことを行い、回復に努めてください。

  • ①故障したらまずは休むことを考えてみましょう。
  • ②故障の部位によっては、テーピングすることにより痛みが軽減することもあります。
  • ③スポーツドクターを訪ね、故障箇所、原因、治療法などの確立を図りましょう。
  • ④体重を増やさないようにしましょう。食事のコントロールや軽運動などを行い、トレーニング再開時に故障箇所の負担増にならないようにしましょう。
  • ⑤故障の部位にもよりますが、心肺機能、筋力低下を招かないためには、水泳、エアロバイク、ステップ運動等がおすすめです。

1か月前の練習

さぁ、レースに備えての調整に入るときです。
1か月前は、エリートランナーも初心者の皆さまも同じですが、練習の負荷の与え方、疲労を抜くこと、食事の摂り方、体調管理・・・ともっとも気を使うときです。

少しでも速く走りたいがために、スピード練習をやってみようなどとは絶対に考えないでください。この練習をやってしまったために筋を損傷したりすると、修復に1か月以上かかってしまいますし、筋の修復のため糖が使われてしまいます。そうなると、走るのに必要なグリコーゲンの再生が遅れ、疲労の原因にもなりかねません。このため、必要以上の負荷をかける練習は避けてください。

睡眠を十分にとる、食事はバランスを考える、そして体調面では季節の変わり目なので、風邪をひかないように気を付け、これまでの練習を継続してください。

ランニングフォーム

初心者ランナーの皆さま、この時点でフォームのことをいうと、かえっておかしなフォームになって走れないこともあるかと思いますが、次回の参考になればと思い述べてみます。

  • ●全体の姿勢は、頭上からロープで吊り上げられた状態をつくり、頭の位置が体の中心の上にくるようにしましょう。頭が前になる人はあごを上げ、頭が後ろになる人はあごを引くとよいでしょう。
  • ●腰を最初に前進させるイメージをつくりましょう。
  • ●胸を張って酸素吸入が楽にできるようにしましょう。
  • ●着地は足裏の面でとらえて、母指球でプッシュしましょう。
  • ●目線は地面と平行線上を見ながら走りましょう。
  • ●腕振りは、上体の力を抜いた状態でひじを曲げて前後に振りましょう。
  • ●手首は力を抜いて、外側に開かないようにしましょう。手の親指に力が入ると肩まで力が入ってしまうので、むしろ小指を軽く握る感じをつくりましょう。
  • ●着地のときに、かかとがひざの真下にあるように走りましょう。かかとがひざより前に出るとブレーキがかかってしまいます。
  • ●走法にはスライド走法とピッチ走法がありますが、初心者は全身の筋力がないので、ピッチ走法をおすすめします。ランニング時は、片足には体重の3~5倍の力が加わります。筋疲労、ひざ、足首、腰の負担を軽くして、毛細血管の破壊を少なくするためにもピッチ走法で走りましょう。

1週間前の練習

エリートランナーやジョガーでも、マラソンに何回もチャレンジするランナーは、大会1週間~3日前位の中で、カーボローディング(LSD*1で体内の筋グリコーゲン*2を枯渇させ、その後、炭水化物を摂取し*3、筋グリコーゲンを大幅にアップさせる)を行い、レース本番のエネルギーを蓄える方法をとっています。しかし、皆さまがやり方を間違えばマイナス面も出てきますから、この方法で走ろうとする方は、LSDやカーボローディングについて詳しい人によく聞いて行ってください。

次に、疲労を完全に取り去ることを考えてみましょう。そしてカーボローディングした後に、貯め込んだエネルギーを使わないために、練習量を大幅に減らし、休養に努める。また、特にこの週はストレスをためないようにマイナス思考はやめましょう。

そしていよいよレース本番です!
これまでやってきた練習を信じて、無理なく自分のペースで完走を目指しましょう。
そこには、きっとこれまで体験したことのないあなただけの感動のドラマが待っているはずです。
皆さまの健闘をお祈りいたします。

  • *1「ロング・スロー・ディスタンス(Long Slow Distance)」の略語。負荷をかけないで、長い時間・ゆっくりと・長い距離を走るトレーニングのこと。
  • *2筋肉に蓄えられる糖の一種で、筋肉の収縮のためのエネルギー源となる。
  • *3食事の摂り方「マラソン前の食事」参照
レース中の給水・給食、完走に向けた心構え

まず注意しなければならないことは、レース前(15分~60分)の糖分補給はやめましょう。血糖値を下げるためにインスリンが急増し、低血糖を起こしたり、脂肪の分解を抑制してエネルギーとして利用しにくくする作用があるため、完走が難しくなることにもなりかねません。十分注意しましょう。

しかし、レース直前またはレース中の糖分補給は、筋グリコーゲンの節約効果があります。私のチームの選手には、ゼリー状のエネルギー飲料を取らせていました。また、給水ポイントでは、後半のエネルギー切れや体温の上昇を防ぐためにも、スポーツ飲料・水をこまめに、そして確実に摂取してください。

坂道を上るときや向かい風のときはそれなりにペースがダウンし、下り坂や追い風のときはそれなりにペースアップすることを頭に入れて走りましょう。そうすれば、乳酸をできるだけ貯めない走り方につながります。

初心者の皆さまや特別に糖分補給等が必要な方は、自分にあったエネルギー補給食を持って、レース中、こまめに取り入れて走ってみられてはいかがでしょうか。